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双葉葵

  • 22年前、数寄屋建築の名匠、京都の中村外二工務店を尋ねたことからこの部屋の構想は始まりました。尋ねた名匠の話をうかがいつつ、「今の自分には及ばない世界だ」と断念。自分があらゆることを学んで成長することを決意。時が訪れるのを待ちました。
    その間に、夢は次第に膨らんでいき、20年という歳月を経て、再び名匠のもとを尋ねたのは、2019年9月。設計、施工を約束してもらい、着工は更に2年後の2021年10月でした。
    着工に当たるまでは、さまざまな希望に耳を傾けてくれ、それに対して是非のやりとりが重ねられること数十回に及び、さらに工事をしている段階でも新しい提案が次々と工務店からも提案されました。
     館主は、これだけの素晴らしい空間にふさわしい備品を揃えたいと、その選定に心を砕き、日本のホテルや旅館ではみかけないグレードの高い品々を取り寄せ、肌触りや心地よさ、デザイン性を確認しながら揃えています。

    玄関、前室、和室、洋室、洗面室、銀泉の浴室、トイレット、クローゼットと、「双葉葵」は一軒家の趣を呈すスイートルームです。

    館主 駿川武志
  • 和室(座敷)

    名匠の数寄屋仕事は、「材料」「道具」「掃除」の3本を柱として伝えられてきました。常に吟味した最高の素材を揃え、最適な素材を施主に提案してきました。
    今回も最初に館主は、和室の床柱を選ぶことから始まりました。赤松の皮付き丸太。これを選んで、この座敷の全体像が絞られていきました。すべて、茶室寸法で仕上がった落ち着いた空間となっています。
    数寄屋は、千利休が確立した簡素な茶室の意匠を基本とし、かつ自由な洗練された趣を特徴とします。葦と藤蔓で編んだ下地窓、また広縁のなぐり仕上げなど、職人による手仕事のあしらいは、名匠ならでは。ひっそりと味わい深い趣を加えています。左官による土壁仕上げ、障子や襖などの建具が、光や風を取り入れて心地よさを招きます。襖や障子には、京都ならではのこまやかなセンスが施され、高度な技術も見られます。床框の面皮には呂色が配されるなど洒脱な趣もあり、「花は野にあるやうに」のもてなしを心がけ、自在な花や設いを旨とする華野ならではのフレキシブルな茶室空間の座敷となっています。

       下地窓  葦、藤蔓
       鴨居   赤杉
       地袋   栂 絹貼り
       広縁   栗なぐり仕上げ
       天井   赤杉中杢板貼り、竿縁天井
       柱    北山杉
       広縁天井 五行簾貼り
       文机   栂
  • 洋室

    シモンズのセミダブルツインベッドが置かれた洋室。その傍らでは、ミニバーとしてお酒を楽しめるようになっています。洋室ですが、障子を入れることにより、スイートルーム全体の統一感を生んでいます。
    この障子は、館主念願の吉村障子を入れました。建築家・吉村順三が、桟の間隔を広く、桟や枠を細目に、組子と框寸法の見付寸法を統一した障子デザインで、仕上がりは何本もの障子がまるで一枚に見える空間意匠的な障子で、洋室に穏やかな光を差し込んでくれます。
    床はナラ材、壁は漆喰塗りの落ち着いた洋室には、ベッドサイドテーブルも、お酒を傾けながらくつろぐためのテーブルや椅子などの家具にも、イタリアのカッシーナ製が選ばれてモダンさと洗練をさりげなく伝えます。
    壁にあしらった絵は、インカ帝国の古布(14世紀)という貴重で存在感あるものですが、まるでこの部屋のためにあるかのように納まりました。

         床   なら材
         壁   漆喰塗り
         障子  吉村障子  枠 青森ヒバ
         ミニバー ナラ材
        家具
         ベッド  シモンズ
         ベッドサイドテーブル
              カッシーナ(イタリア/ミラノ)大理石
                ピエロ・リッソーニデザイン
         テーブル  カッシーナ:チェストナッツ材 イクスシーR&Dデザイン
         椅子    カッシーナ(ニューヨーク近代美術館コレクション)
                 マリオ・ベリーニ
         ベッドスプレッド  リモンタ社
                   (イタリア北部のレッコ地方・コスタマスナーガにある名門テキスタイルメーカー)
  • 浴室

    銀泉が溢れるように満たされる浴室は、十和田石を用いた仕上げとなっています。十和田石は、湯に塗れた石の色がえも言われぬ美しさを醸しだし、吸い付くような足触りが特徴です。壁には、東北に分布するヒバを貼り、窓からは大木の紅葉が枝を広げて、お湯に入りながら、初夏の新緑、秋の紅葉と眼を楽しませてくれます。

        天井   寒水塗り
        壁    ヒバ羽目板張
        浴槽   十和田石張
        レインシャワー   グローエ(イタリア)
  • 洗面室

    朝に、またお湯上がりにゆったりとした気分でくつろいでいただけるように、洗面室にもこまやかな意匠をあしらって、ソフィスティケートされた洗面室としました。天然石のライムストーンの洗面台には、ドイツのカルディバイによる真っ白な円形のボールが、二台据えられています。椅子は、リッツウエル社製。デンタルケア用品は、イタリアのマーヴィス製。アメニティには、やはりイタリアのフェラガモ社製のものを用意いたしました。
    鏡は、稲葉京氏デザインによる、バリ島特注品。中村工務店の特別仕様の和紙を使った照明が、柔らかな光を発しています。そして何より探し回って求めたのが、バスローブです。トルコのブランド、ハマム社製で世界中の高級ホテルやスパ御用達という評価を得ている品。その肌触りは格別で、心地よい滞在をお約束できるはずです。

       洗面台   天然石ライムストーン
       手洗い器  鋼板ホーロー カルデバイ(ドイツ)
       カラン   グローエ(イタリア)
       床     タイル張り
       壁     漆喰塗

       バスローブ  ハマム(トルコ)
  • 玄関
    竹の桟に赤杉を横桟に配した洒脱な格子戸の内玄関が、ここは特別な空間であることを語ります。格子戸越しに客室名、「双葉葵」の表札が見えて特別な空間へと誘われます。格子戸を経て入り口扉が更にあります。入り口扉は、赤杉に絹張り。床は奈良材。天井には土佐和紙を貼ってあります。
  • 前室
    和室(全て茶室の寸法による)に入る前室の天井は、版木に彫られた模様を一枚一枚手で摺り上げる美しい京からかみ貼り。その柄は双葉葵。雲英(きら)を糊に混ぜ込んで版木等で紙に押し付けて模様を作る昔ながらの雲英押し技法による銀色の双葉葵です。スイートルームの部屋の名前は、この唐紙模様に由来します。